「最強の読み方」情報を扱うプロの対談

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とても勉強になる対談本を読みました。

『僕らが毎日やっている最強の読み方 新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意』(池上彰/佐藤優 著、東洋経済新報社 出版)

知の巨人

ジャーナリストの池上彰氏と、作家で元外務省主任分析官である佐藤優氏の対談を収めた本書。

池上彰氏の知識とわかりやすい解説はテレビなどでお馴染みですが、その池上彰氏が「知の巨人」と表現する佐藤優氏もまた幅広く深い知識をお持ちで、いくつもの著書があります。

佐藤優氏は元外交官でモスクワの日本大使館勤務。『読書の技法』は自分も以前読みましたが、自分のレベルでは理解できないことが多く、溢れんばかりの知識に只々圧倒されたことを覚えています。

日常生活ではやはり新聞から情報収集

最新のニュースから遠い海外の歴史まで知っていて、常に新しいことを学ぼうとされている両氏。どうすれば少しでも近づくことができるのか、お二人が普段やっていることを語られています。

世の中で起きていることを「知る」には新聞がベースになり、世の中で起きていることを「理解する」には書籍がベースになります。

(31ページより)

自分も今日ちょうど、ゲノム編集食品のニュースが気になり、ネットで調べました。ゲノム編集技術:農林水産技術会議というところでpdf資料があったので概ね納得できたのですが、お二人であれば恐らく納得するまで書籍を読まれるでしょう。私もTODOリストに追加しておきます。

新聞の読み方

いまはニュースの取り上げ方そのものが新聞ごとに違っていて、そこに意図が感じられるようにもなっています。

(42ページより)

書かれた2016年の時点で「産経新聞」「読売新聞」「日本経済新聞」が保守、「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」がリベラルの立場。これは2013年12月26日、安倍首相の靖国神社参拝からはっきり意識されたとのこと。社説などを読んで、これが中立な世の中の意見、などと思うべきではなく、2紙以上を読んだほうが良い。

新聞について有名なのは池上彰氏の読み方。池上彰氏は毎日11紙に目を通しています。先の6紙に加えて「朝日小学生新聞」「毎日小学生新聞」「中国新聞」「信濃毎日新聞(長野県の県紙)」「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」。

朝は20分で見出しを中心に目を通し、興味を持った記事を中心に夜寝る前に1時間ほどで全体に目を通すそうです。必要な記事は切り抜いて保存し、移動時間にじっくり読むなどするとのこと。そう聞くと簡単そうですが、適切に取捨選択できるようになるまでは時間が掛かりそうです。

自分は取り敢えず11紙も購読できないので、2紙をコンビニで買って読み比べから徐々に始めようと思います。

新聞の地方紙とは

「全国紙」というと全国の人が読んでいると思いがちですが、実態は大都市とその周辺の人が主に読んでいる「大都市圏新聞」と言ったほうが正確

(59ページより)

地方紙の重要性にも言及されています。全国レベルでは県紙やブロック紙を読む人口はかなり多く、都道府県でたいてい1紙は発行されている県紙(「信濃毎日新聞」「南日本新聞」など)と複数都道府県にまたがるブロック紙(「西日本新聞」「中国新聞」など)がある。地方紙では地元のイベントや訃報まで載っているらしいが、自分は読んだことがありません。どこで買えるんだろう?

面白いのは、日露関係が動き出す時に北方領土問題についての情報が「北海道新聞」に流れる、など地域性が大きいこと。そう言えば「琉球新聞」「沖縄タイムス」も米軍基地問題の時はいつも名前が上がっていたように思います。

通信社とは

外国に特派員を派遣したり、外国のニュースなどを購入したりする費用は単独では負担が大きいため、全国の報道機関が資金を出し合い通信社をつくりました。日本では「共同通信社」「時事通信社」が主で、他にアメリカの「ロイター」「AP通信」、韓国の「聯合ニュース」、中国の「新華社」などもよく耳にします。

日本の全国紙には、通信社の記事をほとんど扱わないという奇妙な習慣がある

(64ページより)

地方紙では海外や東京の主要官庁を独自取材する余力がないため通信社の記事を掲載する。そのため通信社のニュースを読むには、地方紙を見ればいいということになるようです。通信社のニュースはとにかく速く、全国紙にでてこない国際ニュースを知ることができる

池上彰氏がなぜ「中国新聞」「信濃毎日新聞」を読んでいるのかがわかりました。自分も今度見かけた時に地方紙を読んでみようと思います。

電子版

佐藤優氏は電子版での購読が多く、エバーノートやドロップボックスも使いこなされているとのことで、電子版をオススメしています。紙よりかさばらないうえ、速く読めるとのこと。スマホではきついのでタブレットですね。自分はタブレットを持っていないので、いずれ欲しいです。

雑誌の読み方

「電子雑誌の定額読み放題サービス」の登場によって、まさに過渡期を迎えようとしています。

(100ページより)

佐藤優氏は1960年生まれですが、電子機器を使いこなされていますね。自分はつい最近ヤフープレミアムの雑誌読み放題を見て感動していましたが、2016年時点で既に雑誌読み放題サービスを利用されていたようです。

紙面では「dマガジン」「ビューン」が紹介されていました。どちらも月500円程でいろいろな雑誌を読めるので、普段雑誌を読んでいる方にするとかなりお得ですね。「週刊文春」や「ニューズウィーク日本版」も読めるそうです。

自分は新聞だけで精一杯なので、娯楽系のヤフープレミアムでしばらくは行こうと思いました。

週刊誌の問題は「情報の真偽」がわからないこと。「信頼できる書き手の記事」を中心に読むのが基本。

(114ページより)

以前は「週刊文春」による文春砲が世間を騒がせた一方、訴訟も多い週刊誌。人間の黒い部分をネタにする手法ですが、世の中の雰囲気やトレンドを知るのに有効です。他に「週刊新潮」「週刊現代」「週刊ポスト」といった総合週刊誌があります。

他の雑誌に関する特徴としては、経済誌・ビジネス誌は書籍より情報が早く、チェックしておくと話題になり始める初期の段階でザッと押さえることができます。「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」など。その号によって、特集が大分違うようです。表紙だけでも毎週眺める癖をつけておくといい情報に出会えるかも知れません。

また総合月刊誌という、書評・エッセイ・ノンフィクション・小説などあらゆる情報が1冊に盛り込まれる雑誌があり、日本独自のもの。「文藝春秋」「選択」「FACTA」「世界」「中央公論」など。自分は、ここは純粋に文学に興味があるか、文字を読むのが苦にならない人でないとハードルが高いように感じました。理系なので難しく感じます。

ネットの使い方

ネットの情報は玉石混交で、そこから「玉」だけを選ぶのは、かなりの知識とスキルが必要

(150ページより)

ネットは「上級者」のメディア

(151ページより)

これは正にそうだと思いました。グーグルで検索すれば良い、とかwikipediaを見れば何でも分かると思っている人もいますが、そこで見たものが本当かどうかはわからないということですね。

ネットと新聞や書籍などの大きな違いは、ネットにはほとんど「校閲」がないことです。アメリカでも問題となっているフェイクニュースの可能性もありますが、嘘でなくても勘違いで間違った情報が流れることもあります。

ネットの方が速いとよく言われますが、ネットの情報は多くが二次情報、三次情報です。また、数多く並ぶニュースから重要度を自分で判断しなければならない場合も多く、実は無駄が多い媒体だとお二人が仰っているのはその通りだと感じます。

またニュースアプリなどで、関心があるカテゴリのニュースのみが流れてくるものなどがありますが、これにも注意が必要です。関心のないことを知らないままでいると、どんどん自分の視野が狭くなります。SNSでフォローした相手の情報ばかり見る、というのも同じです。これは一歩間違うと偏見を増長させます。

ネットの情報源となるもの

客観的な視点を養うためにも、ネットの意見やニュースは少数意見と考え、他の媒体もチェックする習慣をつけておいたほうがバランスが良いようです。

両氏がチェックしているものとして挙げられていたものは、「NHKオンライン」「東洋経済オンライン」「ヤフーニュース」「ハフィントンポスト」「@nifty」。信頼できることやニュースが速いこと、トピックをチェックできることなどで利用されているとのことでした。

調べ物では、「ジャパンナレッジ」。有料の百科事典で、出版社が編纂していて更新もされているので信頼性が高いとのこと。ただこれでもネットサーフィンの誘惑があり、本当に集中したい場合は電子辞書を使いネットを遮断するとのこと。確かにSNSをやり始めると時間はあっという間です。

海外では「フィナンシャル・タイムズ」、イギリスの経済誌で英語がシンプルなのでわかりやすいとのこと。英語の勉強にはBBCが英語学習者向けにつくった「LEARNING ENGLISH」も役立つ。「CNNj」はケーブルテレビなどで契約が必要なようだが、海外ニュースを日本語で見られる。日本語版サイトでは、中国共産党の機関紙『人民日報』のネット版「人民網」、韓国の「朝鮮日報」「中央日報」、あとこれは要注意ですが、北朝鮮の事実上公式ホームページである「ネナラ」も日本語版があります。ウイルスに感染する可能性もあるのでアクセスする場合は注意してください。最後に今何かと話題のイランもニュースサイトが日本語で読めます「ParsToday」。

これぞネットの力と言うべきでしょうか、日本語だけでも世界の情勢を知ることができます。他にロシアやイスラエルなども公式サイトがあるようです。

書籍の読み方

いい本に出会うコツは「本をたくさん買う」こと。本は「迷ったら買う」が原則。本の情報は安い。

(218ページより)

本1冊から得られる情報を人から得ようと思うと、食事代や謝礼などその何倍もかかる、と書かれていてハッとしました。確かにそうです。書籍には著者の人生や、何年・何十年かけて蓄積された知識が詰め込まれています。数千円を高いと言ってやめてしまっては、実際は使わずに済んだ余計な時間やお金を使うことにもなりかねないということです。

内容が伴わない本もあるのは事実ですが、見極めは簡単ではありません。だからこそたくさん買って読むしかないということです。

古典について、「白鯨」「坊っちゃん」など古典として非常に有名なものは一度は読んでみた方が良い。といっても自分は理系なので。。という場合にやさしい解説付きのものが良い。「やさしいダンテ<神曲>」「旧約聖書を知っていますか」「新約聖書を知っていますか」「コーランを知っていますか」。知識・教養として、一つくらいは宗教についても学んでおきたいですね。自分は恥ずかしながら仏教も神道も良くわかりません。

記憶の定着

本の読んでも忘れてしまってはあまり意味がない。記憶を定着させるための池上彰氏の手法。

  • 「タネ本」(基本書)を理解できるまで何度も読む
  • 気になる内容を書き込みながら読む
  • 思い出すトリガーとなるニュースや出来事も一緒にメモする
  • 次の本を読む前に本の内容を頭の中で反芻する

自分はこのブログでアウトプットすることにしようと思っています。まだ一冊目なので。書き込みはあまりやらず、電車の移動中などでひたすら読み、読み終わったらじっくり振り返りながらブログに書く感じでやりました。が、思い出すのが難しく結局頭から再度全部読んで書きました。

かなり時間がかかるので改善したいところです。

教科書・参考書の使い方

ここは簡単に。ビジネスマンでも振り返りに教科書・参考書はちょうどいいとのこと。歴史を振り返るなら「日本史A」「世界史A」、社会に出てから「公民」を読み返すのも良いようです。

佐藤優氏は「スタディサプリ」を勧められていました。月額がかかりますが、オンライン学習ができて講師の教え方が上手いので飽きないそうです。教科書より敷居が低いかもしれません。

まとめ

大量の情報に溢れる近年、自分自身で取捨選択する方法を構築する術を持たなくてはなりません。新聞・雑誌・テレビ・書籍、その電子版、更にラジオ・オンラインニュース、ネットやアプリのニュース、SNSなど様々なところで毎日新しい情報が流れています。

自分もよく悩んでいたものの、最近は情報を追うことに疲れ、LINEニュースしか見ない日も少なくありません。しかし世間の話題を知らないとやはり視野も狭くなるように感じ、どうにかしたいと思っていたところにちょうどこの本に巡り合うことができました。

どこから情報を収集するか、どう読むか、なぜそうするのか、お二人共独自の手法を築き上げていて、とにかく知識量が物凄い。そして本当に地道に毎日コツコツとやられていて、ちょっとやそっとではまるでビクともしないほど丈夫な基礎ができているように感じました。

速読すれば、とかこれを読めば、とか軽いものではなく、本腰を入れて毎日の生活を変えたほうが良いように感じます。とにかく明日から、活字を多く見ることを心がけて少しずつ基礎を固めていきたいと思います。

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